不動産業者が運転資金を借入れたい方に6つの融資を分かりやすく解説

投稿日:2025年3月10日

「運転資金を借入れたい」
「どんな費用が不動産業者の運転資金に該当するのか?」

と考えていませんか?

このページでは、不動産業者の運転資金の借入について、プロが分かりやすくご案内します。

この記事の作成者

融資部 部長
浜崎 雷Rai Hamazaki

【資格】管理業務主任者、宅地建物取引士
お客様の大切な所有不動産の評価を最大限に、ゆとりある生活のサポートをさせていただきます。「お客様の明日のために、今日、自分は何ができるか」を考え、日々奮闘しています。

不動産業者が運転資金を借入れる上で知っておきたい4つのこと

4つのこと
  1. 不動産業の運転資金の範囲
  2. 短期借入金・長期借入金に分けられる
  3. 物件の購入資金は運転資金ではない
  4. 不動産賃貸業は運転資金の借入れが難しい

それぞれご案内していきます。

①不動産業の運転資金の範囲

運転資金とは、日常的な運営や事業活動を行うために必要な定常的にかかる資金のことです。

不動産業の場合は物件の購入費以外の費用です。

具体的な運転資金は次の通りです。

運転資金の例
  1. オフィスに関わる費用(賃貸料、水道光熱費など)
  2. 広告宣伝費
  3. 人件費
  4. 賃貸物件の管理、運営費
  5. 空室対策費用
  6. 修繕費
  7. 賞与資金、納税資金
  8. 借入金の返済

この運転資金は固定費と変動費に別れます。

  • 固定費…売上の増減にかかわらず固定で発生する費用
  • 変動費…売上の増減に連動して変動する費用

②短期借入金・長期借入金に分けられる

運転資金の借入には、短期借入金と長期借入金があります。

短期借入金とは、借入れから1年以内に返済する融資のことです。

  • 短期借入金の例
種類 内容
プロジェクト融資 不動産売買を目的に不動産を購入する場合に受ける融資のこと
運転資金 1年以内に再販できる規模の小さな案件に関わる運転資金

長期借入金とは、借入れから1年以上かけて返済する融資のことです。

  • 長期借入金の例
種類 内容
長期保有融資 不動産賃貸業で、物件の長期保有で賃料収入を得ることが目的の融資のこと
運転資金 再販まで1年以上かかる規模の大きな案件に関わる運転資金
設備資金 事業に使用する不動産や備品などの購入資金のこと(車両購入費、HP制作費用など)

③物件の購入資金は運転資金ではない

物件の購入資金は、運転資金ではなく、設備資金です。

不動産業は3種類ありますが、いずれの場合も同様です。

  • 3種類の不動産業
種類 概要
①不動産売買業 所有物件を販売する事業のこと
②不動産賃貸業 所有物件を賃貸する事業のこと
③不動産仲介業 売主と買主、貸主と借主の契約成立に向けて仲介役になる事業のこと

ただし、売買で利益を得る場合、前述のプロジェクト融資を利用して物件を購入します。

賃料収入のような長期間に渡って利益を得る不動産賃貸業の場合、長期保有融資を利用して物件を購入します。

より具体多岐な内容は、こちらの「不動産の仕入れ融資に対応している3種類の金融機関と利用できる融資」をご覧ください。

④不動産賃貸業は運転資金の借入れが難しい

理由は2つあります。

2つの理由
  1. 運転資金が必要ないと考えられている
  2. 回収不能リスクが高いと考えられている

不動産賃貸業では、毎月一定の家賃収入が入ります。

このことで金融機関は「人件費や維持管理費、修繕費・管理費などの運転資金は、家賃で賄われるべき」と判断します。

回収不能リスクとは、家賃の滞納や空室などのことです。

金融機関は「滞納や空室が増えれば、運転資金の返済が滞る」と判断します。

不動産業者の運転資金の借入れの目安と計算方法

必要な運転資金の目安と計算方法、シミュレーションをご案内します。

運転資金の目安

一般的に、月の総売上高の最低3ヶ月分が目安とされています。

例えば、月の総売上高が約5,000万円になると予想される場合、必要な運転資金は約1億5,000万円です。

運転資金の算出方法

必要な運転資金は、掛取引における売掛金と買掛金の差額を算出できます。

計算式は次の通りです。

運転資金の計算式

運転資金=売掛金+棚卸資産(在庫)−買掛金

それぞれの用語の意味は次の通りです。

  • 用語の解説
用語 一般的な意味 不動産業での意味
売掛金 販売後に取引先から現金を受け取っていない金額 物件の売買代金、仲介手数料、未収の家賃
棚卸資産(在庫) 仕入れ後に販売していない在庫 販売用の物件(土地、建物)
買掛金 仕入後に取引先に支払ってない金額 仕入れた物件、工事費、広告宣伝費などの未払い分

運転資金のシミュレーション

前提条件
  1. 売掛金…5,000万
  2. 棚卸資産…4,500万
  3. 買掛金…3,5000万

上記の前提条件を運転資金の計算式(運転資金=売掛金+棚卸資産−買掛金)に当てはめると、次のようになります。

  • 5,000万 + 4,500万 – 3,500万 = 1億3,000万円

この場合の運転資金は1億3,000万円です。

不動産業者の運転資金として利用できる6つの融資

5つの融資
  1. 新事業育成資金(日本政策金融公庫)
  2. 新規開業資金(日本政策金融公庫)
  3. 経営環境変化対応資金(日本政策金融公庫)
  4. 保証協会付融資
  5. 銀行のプロパーローン
  6. ノンバンクの融資

詳しくご案内していきます。

①新事業育成資金(日本政策金融公庫)

日本政策金融公庫(にほんせいさくきんゆうこうこ)は、国が100%の株式を所有する財務省管轄の特殊な金融機関のです。

新事業育成資金とは、開業後おおむね7年以内の人が利用できる融資制度の日本政策金融公庫のことです。

  • この融資のポイント
融資限度額 7億2,000万円
返済期間 7年以内
利率 上限2.5%~

利用条件は、成長事業育成審査会で新規性と成長性が見込まれる認定を受けた方です。

具体的には日本公庫各支店の窓口にお問い合わせください。

参照)日本政策金融公庫「新事業育成資金

②新規開業・スタートアップ支援資金(日本政策金融公庫)

「新規開業・スタートアップ支援資金」とは、新たに事業を始める方に対して資金を融資する制度のことです。

  • この融資のポイント
融資限度額 4,800万円
返済期間 10年以内
利率 2.2%~

利用条件は次の通りです。

利用条件
  1. 新たに事業を始める方
  2. 事業開始後おおむね7年以内の方のうち、女性または35歳未満か55歳以上の方

女性や35歳未満・55歳以上の方は、「女性・若者/シニア起業家支援資金」も利用できます。

具体的には日本公庫各支店の窓口にお問い合わせください。

参考)「新規開業・スタートアップ支援資金」「女性、若者/シニア起業家支援関連

③経営環境変化対応資金(日本政策金融公庫)

経営環境変化対応資金とは、急激な市場などの変化によって業績が悪化した企業に融資する制度のことです。

セーフティネット貸付とも呼ばれます。

融資対象の事業には、国民生活事業と中小企業事業の2つがありますが、この記事では国民生活事業についてご案内しております。

  • この融資のポイント
融資限度額 4,800万円
返済期間 8年以内
利率 2.80%

利用条件は次の通りです。

利用条件
  1. 社会的・経済的環境の変化などにより、一時的に状況の悪化を来している会社の経営基盤強化を図る目的の場合に利用できる

具体的には日本公庫各支店の窓口にお問い合わせください。

参考)日本政策公庫「経営環境変化対応資金

④保証協会付融資

信用保証協会付融資は公的な信用保証を提供する機関です。

万が一事業主(中小企業や個人事業主など)が返済できなくなっても、信用保証協会が代わりに、債務者の金融機関に支払ってくれます。

金融機関の審査基準が緩和されるため、事業主は融資を受けやすくなります。

保証協会付融資の申込は、基本的に次の民間金融機関や保証協会を経由して行われます。

  • メガバンク
  • 地方銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合等

問い合わせ窓口は次の通りです。

  • 金融機関経由の場合…金融機関に問い合わせる
  • 信用保証経由の場合…各地域にある信用保証協会に問い合わせる

無担保の場合で8,000万円、有担保の場合で2憶8,000万円借りられます。

返済期間は7年で、金利は地域によって異なりますが、例えば岐阜市信用保証協会では、0.45%~2.2%です。

参考)岐阜市信用保証協会「保証協会保証制度 普通保証

⑤銀行のプロパーローン

プロパーローンとは、銀行が法人の信用に基づいて独自で設定する保証協会は通さない融資のことです。

メリットは次の通りです。

  • 他の金融機関と比べると低金利
  • 借りられる金額が大きい
  • 借りられる期間が長い

デメリットは審査の厳しさです。

返済能力や信用情報、事業計画について銀行の厳しい審査を通過する必要があります。

利用する条件にいては、銀行や信用金庫にお問い合わせください。

⑥ノンバンクの融資

ノンバンクとは銀行ではない金融機関のことです。

  • カードローン会社
  • 不動産担保ローン会社
  • クレジットカード会社

など

銀行と比べると審査がスピーディで、融資条件が厳しくありませんが、金利は高いです。

不動産業が運転資金を借入る場合は、不動産担保ローンやプロジェクト(PJ)融資を活用します。

不動産業者が運転資金をスムーズに借入れするための4つのポイント

4つのポイント
  1. 会社の状況が分かる書類を準備する
  2. 事業計画書を用意しておく
  3. 信用情報を管理する
  4. 担保を準備する

それぞれ詳しくご案内します。

①会社の状況が分かる書類を準備する

金融機関は確実に返済されるかどうかを審査します。

そのためにチェックされるのは、過去数年分の損益計算書や貸借対照表です。

加えて、当面の資金繰りが分かるように、資金繰り表も作成しておいてください。

過去3~4年、黒字経営であれば、銀行融資に通りやすいです。

②事業計画書を用意しておく

次のことが分かる事業計画書を用意してください。

  • 借入れたお金を使う目的
  • 借り入れたお金の投資効果

短期、中期、長期の市場分析と収益予測をすることで、確実性が高い内容にしておく必要があります。

事業計画書の作成については、金融機関の窓口で相談してみてください。

③信用情報を管理する

次の状態では金融機関の審査は通りません。

  • 税金や公共料金を滞納している
  • 借入金の返済遅延や未払いがある

過去にこのような履歴があると、審査は厳しく行われます。

「返済能力が低い」「回収リスクがある」とみなされるからです。

④担保を準備する

不動産などの担保があれば、審査に通りやすいです。

担保の分、借入れできる上限金額が上がります。

ノンバンクでは、銀行よりも不動産の評価が高い場合があります。

不動産業者の運転資金の借入れについてのまとめ

運転資金を借り入れるのは制限があります。

制度をうまく利用してみてください。

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