「老後に固定資産税を払えないとどうなるの?」
「滞納すると財産を差し押さえられるって本当?」
このように悩んでいませんか?
このページでは、老後に固定資産税を払えない場合の対処法を、プロが分かりやすくご案内します。
目次
老後に払えない人が多い?固定資産税とは
固定資産税とは、次の固定資産を保有している場合にかかる税金のことです。
- 土地
- 家屋
- 償却資産(事業の用に供することができる資産)
市町村が徴収し、次のように日々の生活を支える財源として活用されます。
- 道路整備
- 学校の整備
- 公園の整備
- 介護、福祉サービス
固定資産税の納税義務者と納付期限
固定資産税の納税義務者は、1月1日時点で固定資産台帳に所有者として登録されている人です。
年の途中で不動産を売却しても、1月1日時点で所有していれば、その年の固定資産税を納める必要があります。
税額が確定すると、毎年4月に「納税通知書」が送られてきます。
納付方法は一括か分割払いで、分割払いの場合の納付月は次の通りです。
- 4月
- 7月
- 12月
- 翌年2月
納付月は市町村によって異なるため、納税通知書でご確認ください。
固定資産税の対象となる資産
・固定資産税の対象となる資産の種類と用途
種類 | 用途 |
---|---|
土地 | 宅地、田、畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野 |
家屋 | 住家、店舗、工場、倉庫 |
償却資産 | 会社等事業者が所有する構築物、飛行機、船、車両、運搬具、備品 |
一般の人なら、固定資産税の中心は宅地と住家です。
償却資産については、事業を行っていなければ気にする必要はありません。
固定資産税の税額
- 課税標準(固定資産税評価額)✕ 1.4%(標準税率)
固定資産税評価額とは、それぞれの自治体が個別に定めた土地や家屋の評価額のことです。
評価額は納税通知書に記載されています。
税率は1.4%が基本ですが、お住いの地域により異なる場合があります。
老後に固定資産税が払えない2つのケース
ケースは2つあります。詳しくご案内します。
【ケース①】収入が年金だけ
老後の収入が年金だけだと、生活費の支払いだけで精一杯で、固定資産税を支払う余裕がなくなる可能性があるからです。
総務省の統計によると、65歳以上の単身無職世帯における1か月あたりの平均支出額は145,430円です(2023年)
参考)総務省統計局 2023年(令和5年)家計調査報告(家計収支編)
1か月に支給される平均的な年金額は次の通りです。
・年金受給額の平均
年金の種類 | 1か月あたりの受給平均額 |
---|---|
国民年金(自営業者) | 56,316円 |
厚生年金+国民年金(サラリーマン) | 144,982円 |
参考)厚生労働省「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
年金収入だけだと収支がマイナスで、固定資産税を払う余裕がなくなる可能性が高いです。
【ケース②】不動産を相続した
両親や親族の他界によって不動産を相続すると、固定資産税の支払い義務が生じ、生活費を圧迫するからです。
先ほどもご案内しましたが、固定資産税は毎年1月1日時点における所有者に課されるため、不動産を相続して所有し続けると納税義務が生じます。
不動産の評価額によっては相続税が別途発生する可能性があり、さらに家計がひっ迫します。
老後に固定資産税を払えないと財産を差し押さえられる!
固定資産税を滞納したまま放置した場合、財産を差し押さえなければならないと法律で定められているからです。
参考)e-GOV 法令検索「地方税法第331条 市町村税に係る滞納処分」
財産差し押さえまでの流れは、次の通りです。
それぞれ詳しくご案内します。
【流れ①】延滞金が発生する
延滞金とは、納期限までに納めた人との公平性を保つために課されるペナルティのことです。
延滞1日目から発生し、延滞金の割合と計算方法は次の通りです(令和4年1月1日から令和6年12月31日までの場合)。
- 納期限後1か月以内:年2.4%
- 1か月を超える期間:年8.7%
- 延滞金=税額✕延滞日数✕延滞金の割合÷365日
例えば、20万円の固定資産税を90日間滞納した場合の計算方法は次の通りです。
- ①1か月を経過するまで(31日分)
延滞金=200,000円✕31日✕2.4%÷365日=407円(1円未満切り捨て) - ②1か月を超える期間(59日分)
延滞金=200,000円✕59日✕8.7%÷365日=2,812円(1円未満切り捨て) - 延滞金の合計
①+②=407円+2,812円=3,219円=3,000円(100円未満切り捨て)
【流れ②】自治体から督促状が届く
納税者が納付期限までに固定資産税を納めない場合は、20日以内に督促状を発しなければならないと法律で定められているからです。
参考)e-GOV 法令検索「地方税法第329条 市町村税に係る督促」
督促状が届いたら、延滞金とともに固定資産税を速やかに納めなければなりません。
先ほどもご案内しましたが、税金の滞納を続けると、財産を差し押さえられる可能性があるからです。
地方税法第331条には、督促状を発した日から10日以内に完納しなければ滞納者の財産を差し押さえなければならないと定められています。
参考)e-GOV「地方税法第331条 市町村税に係る滞納処分)
【流れ③】催告書が届く
催告書とは、財産差し押さえ前の最後通告です。
滞納を続けると財産の差し押さえを行うという内容が記載されています。
催告は文書だけでなく、電話や直接訪問によって行われる可能性があります。
【流れ④】財産調査が行われる
財産調査とは、財産の差し押さえを行うにあたって、徴税吏員(地方公共団体の職員)によって行われる身辺調査のことです。
調査対象は次の通りです。
- 官公署(役場)
- 金融機関
- 勤務先
- 仕事の取引先
財務調査は強制的に行われ、会社勤めの場合は勤務先に税金の未納がバレます。
【流れ⑤】財産を差し押さえられる
差し押さえとは、債務者(税金を滞納している人)の財産に対し、債権者(地方公共団体)が税金を回収するために行う行為のことです。
金銭的な価値があり、次のように換価することで税金に充当できるものは、全て差し押さえの対象です。
・差し押さえの対象となる財産
財産 | 具体例 |
---|---|
不動産 | 土地、建物 |
動産 | 現金、貴金属、自動車 |
預貯金 | 銀行の預金 |
給与債券 | 勤務先からの給料 |
生命保険 | 解約返戻金 |
差し押さえられた財産は自由に処分できないため、例えば預貯金が差し押さえられると引き出しができません。
不動産や動産は公売にかけられ、所有権を失います。
老後に固定資産税が払えない場合の8つの対処法
対処法は8つあります。詳しくご案内します。
【対処法①】自治体に相談する
メリットは次の通りです。
- 税金の支払いを先延ばしにできる
- 税金の免除を受けられる
各自治体には、税金を払えない場合の相談窓口が設けられています。
老後の経済的事情によって固定資産税を支払えない場合は、まずは自治体に相談してください。
相談しないまま滞納し続けると「税金を払う意思がない」とみなされ、財産を差し押さえられる可能性があります。
【対処法②】猶予の申請を行う
猶予とは、税金の支払いを先延ばしにしてもらうことです。
次のケースに該当する場合は、申請を行うことで猶予が認められる可能性があります。
- 病気や負傷で収入が減少した
- 災害や盗難にあった
- 廃業または休業をした
- 事業で著しい損失があった
【対処法③】減免の申請を行う
減免とは、税額の軽減または支払いの免除を受けられることです。
減免が認められるケースは次の通りです。
- 生活保護を受給している
- 65歳以上で生活が困窮している
- 障がい者で生活が困窮している
- 寡婦(夫と死別して未婚の人)で生活が困窮している
- 災害による被害を受けた
要件は自治体によって異なるため、各自治体に問い合わせてみてください。
【対処法④】分納の相談をする
分納とは、税金を分割して納めることです。
先ほどもご案内した通り、固定資産税は年4回の分納が可能ですが、申請によってさらに細かく分納できる可能性があります。
分割回数は、自治体との相談により決定します。
【対処法⑤】不動産を売却する
メリットは、固定資産税の支払いから逃れられるだけでなく、まとまった資金が手に入ることです。
1月1日以降に売却すると、原則としてその年分の固定資産税を払わなければいけないので注意してください。
デメリットは、買い手が見つかるまで時間がかかることです。
【対処法⑥】不動産担保ローンを利用する
不動産担保ローンとは、土地や建物を担保にお金を借り入れることです。
不動産を手放すことなくまとまったお金を手に入れられ、固定資産税や生活費の支払いに充てられます。
借り入れ可能額は、不動産評価額の6〜8割ほどです。
その場合は、滞納明細や納付書も一緒にご提出していただき、納税は融資金にて行っていただきます。
- 3,000万円✕60~80%=1,800万円~2,400万円
【対処法⑦】リースバックを利用する
リースバックとは、不動産を売却して、新たに賃貸借契約を結ぶことです。
所有権が第三者に移るため、固定資産税の納税義務から逃れられます。
メリットは、引っ越すことなく住み続けられることです。
デメリットは、毎月の家賃が発生することです。
【対処法⑧】リバースモーゲージを利用する
リバースモーゲージとは、自宅を担保にしてお金を借り入れることです。
生きている間は利息だけを支払い、自分が亡くなった後に自宅を売却してもらい元金の返済に充当します。
借り入れ可能額は、不動産評価額の50%ほどです。
- 2,000万円✕50%=1,000万円
まとまったお金が手に入り、固定資産税の支払いや生活費に充てられます。
ただし、担保にできる物件は都市部に限定されます。
地方の家だと資産価値が低く、売却しても元金を充当できないからです。
老後に固定資産税が払えないときは早めの対処を
老後に固定資産税が払えないときの対処法をご案内しました。
対処方法は8つありますので、支払いが厳しいなら、まずは自治体に相談してください。
固定資産税を払えないと老後はどうなる?のまとめ
老後に固定資産税を払えないと、最終的には財産の差し押さえなどのリスクがありますが、対処法は複数あります。
収入や資産の見直し、分割払いの相談など早めの対応が重要です。
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