「実家が空き家になってしまっているけど、どうするべき?」
「親が他界して急に実家を相続することになった…」
こんなとき、実家をどのように処分すればいいか悩んでしまいますよね。
この記事では、実家が空き家となったときや実家を相続することになったときの有効な処分方法について、プロが分かりやすくご案内していきます。
目次
実家が空き家となっても放置はNG!その6つの理由
誰も住まなくなった実家を空き家のまま放置すると、6つのデメリットがあります。
それぞれご案内します。
【理由①】維持管理のコストがかかる
不動産の所有者は、実際に居住していなくても次の税金を支払う必要があります。
- 固定資産税
- 都市計画税
また、水道・電気・ガス代などのライフラインの基本料金は、契約が続いている限りかかってしまいます。
ライフラインは、不要であれば解約しておくことをおすすめします。
【理由②】資産価値が低下する
人が住まなくなった家は、風通しが悪くなり、カビや湿気によって劣化が進行します。
十分な管理がされない状態が続き劣化した家は、資産価値がどんどん下がり、より処分しにくくなってしまいます。
実家の資産価値が低下するのを少しでも防ぐためには、定期的に手入れをしてきれいな状態を保つことが大切です。
【理由③】老朽化によって倒壊する恐れがある
地震や台風などの災害が発生した際、老朽化した建物は簡単に倒壊してしまうため、非常に危険です。
空き家が倒壊することで、次のような被害が発生する恐れがあります。
- 近隣住民や通行人に危害を及ぼす
- 火災やガス漏れなどの二次災害につながる
そうなった場合、多額の損害賠償責任を負う可能性があります。
【理由④】犯罪の温床になる恐れがある
空き家は、不法侵入や放火などの犯罪の温床となる恐れがあります。
例えば、2019年には、埼玉県で窃盗目的で空き家に侵入した少年が、証拠を残さないように放火した結果、空き家が全焼したという事件が発生しました。
また、最近では、空き家が
- 振り込め詐欺
- 架空請求詐欺
でだまし取ったお金の送付先に使われるケースが増えています。
【理由⑤】近隣住民トラブルの原因になる
空き家を放置することで、次のような問題を引き起こす可能性があります。
- ゴミの不法投棄
- 草木の繁茂
- 害虫の発生
- 異臭の発生
その結果、近隣住民に迷惑をかけ、トラブルになるケースが後を絶ちません。
【理由⑥】特定空家に指定される場合がある
2014年に制定された「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、適切に管理されていない空き家は「特定空家」として指定されることとなりました。
特定空家に指定されることで、その所有者は、市町村から助言、指導、勧告を受けます。
勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例という優遇制度が適用されなくなり、税額がそれまでの最大6倍となります。
勧告されても対処しない場合、市町村は空き家の所有者に対して改善の命令をします。
命令に従わない場合、次の処分が課せられる可能性があります。
- 50万円以下の罰金
- 行政による強制的な建物の解体
実家が空き家となったらどうするべき?5つの処分方法
この5つが、空き家となった実家の処分方法です。
【処分方法①】売却する
売却する一番のメリットは、まとまった資金を得られることです。
また、実家を手放すことで、維持管理に余計なコストや手間をかける必要がなくなります。
実家が親や兄弟・姉妹と共有名義の場合であっても、自分の持分だけを売却できます。
詳しくはこちらの「共有持分の不動産を売却する4つの方法」でご案内していますので、ご一読ください。
売却する際の注意点として、実家の状態や立地によっては、すぐに買主が見つからない場合があります。
また、想定していたより安くでしか売れない場合があります。
そんなときは、複数の不動産会社に査定を依頼することで、少しでも高く売却できる可能性があります。
【処分方法②】不動産担保ローンを利用する
「実家を手放したくないけどまとまった資金が必要」という場合は、不動産担保ローンを利用する選択肢があります。
土地や建物などの不動産を担保にすることで、比較的大きな金額の融資を低金利で受けられます。
売却時と同様、実家が親や兄弟・姉妹と共有名義の場合であっても、自分の持分を担保にして不動産担保ローンを利用できます。
詳しくはこちらの「共有持分の不動産のメリット、デメリット」でご案内していますので、ご一読ください。
ただし、実家の資産価値によっては融資が受けられない場合がある点に注意が必要です。
また、ローンが返済不能になると担保にした実家を手放すことになるため、融資を受ける際はしっかりとした返済計画を立てておくことが大切です。
【処分方法③】賃貸に出す
実家を賃貸に出すことで、一定の家賃収入を得られます。
実家を手放すことなく定期的な収入を得られることは、大きなメリットです。
ただし、賃貸に出すと次のデメリットがあります。
- 事前にリフォームが必要になる場合がある
- 入居者が見つからなければ損をする可能性がある
- 管理に手間や費用がかかる
- 家賃滞納や家の汚損など入居者とトラブルになる恐れがある
賃貸物件として貸し出す場合は、不動産会社とも相談しながら、事前に収支のシミュレーションをしておくことが大切です。
【処分方法④】取り壊して土地活用する
建物の維持管理に費用をかけたくない場合は、建物を取り壊して、土地を別の形で活用する方法があります。
次のように活用することで、定期収益を得られます。
- アパートやマンションなどに建て替えて賃貸経営する
- 駐車場にする
また、売却する際も、家付きより土地のみの方が高く売れやすいというメリットがあります。
しかし、次のデメリットがあるため注意が必要です。
- 解体する費用が発生する
- 更地にすることで固定資産税の軽減対象から外れる
実家を取り壊す際は、あらかじめ土地の活用方法を決め、収支を予想を立てたうえで更地にしてください。
【処分方法⑤】自分や身内が住む
自分や身内の誰かが引き続き実家に住むことで、愛着のある実家を手放す必要がなくなります。
必要な手続きが少なく、もっとも手間がかからない方法です。
ただし、実家が老朽化している場合は、リフォームや修繕に費用がかかることがあるので注意が必要です。
また、相続人が複数いる場合は、遺産分割についてもめる可能性があります。
実家を相続することになったらどうする?必要な手続きの流れ
必要な手続きの流れ
相続する際には、さまざまな手続きを行う必要があります。
具体的な手続きの流れは次のとおりです。
- 遺言書の有無を確認する
- 相続人を確認する
- 財産調査を行う
- 相続放棄や限定承認をするか決める(3か月以内)
- 準確定申告を行う(4か月以内)
- 遺産分割協議書を作成する(相続税の申告までに)
- 相続税の申告を行う(10か月以内)
- 相続登記を行う(3年以内)
この中でも特に、実家を相続する場合に重要な「限定承認」と「相続登記」についてご案内します。
プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続することです。
つまり、相続財産からマイナスの財産を清算して、なお財産が余ればそれを引き継ぐという方法です。
故人の名義で登記していた不動産を、新しい所有者の名義に変更する手続きです。
相続登記は、2024年4月1日からは義務化され、「相続の開始および所有権を取得したと知った日から3年以内」に相続登記をしなくてはなりません。
正当な理由なく期限内に手続きをしないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
通常、相続ではプラスの財産(預貯金や不動産など)もマイナスの財産(借金など)もすべて引き継ぎます。
また、プラスの財産よりもマイナスの財産が多いことが明らかな場合は、「相続放棄」することで、すべての権利義務を引き継がないことができます。
しかし、「実家は相続したいけど、マイナスの財産が多いから相続したくない」という場合があると思います。
そんなときは、限定承認する選択肢があることを知っておいてくださいね。
実家を相続する時の注意点
- 実家だけを相続放棄することはできない
- 共有名義で相続するとトラブルになることもある
まず、実家が不要な場合であっても、実家だけを相続放棄することはできないという点に注意してください。
実家を相続放棄する際は、その他の財産のすべてを放棄するため、他に引き継ぎたい財産があっても相続できません。
次に、実家を共有名義で相続するとトラブルになることが多い点に注意が必要です。
持ち家は資産価値の大きい相続財産であるため、相続人の間で意見の相違が起こりやすいのです。
共有名義の実家を売却したり担保にて融資をうけたりする場合、基本的には他の共有者の同意を得る必要があります。
ただし、これは実家全体を売却したり担保にしたりする場合です。
自分の持分だけを売却したり担保にしたりすることはできます。
勘違いする方が多いので覚えておいてくださいね。
共有持分を売却する方法について、より詳しくはこちらの「共有持分の不動産を売却する4つの方法」をご覧になってください。
共有持分を担保にして融資を受ける方法について、より詳しくはこちらの「共有持分の不動産のメリット、デメリット」をご覧になってください。
まとめ:なるべく早い段階で実家をどうするか決めておくことが重要
実家が空き家となってしまうと、維持費や管理など多くの問題が発生します。
実家を相続した後どうするかを、なるべく早い段階で両親や兄弟姉妹などときちんと話し合って決めておくことが大切です。
また、実際に空き家となってしまってからも、処分方法をどうするかをなるべく早く決めて、余分なコストや手間をかけないようにしてくださいね。