「親子共有名義で不動産購入しても問題無いかな?」
「親子共有名義のデメリットを知りたい」
このように考えていませんか?
この記事では、親子の共有名義で不動産を購入する場合のデメリットを、専門家が分かりやすくご案内しています。
目次
親子共有名義で住宅を購入する場合の7つのデメリット
詳しくご案内します。
【デメリット①】親が死亡した後、子の負担が増える
借入金+利息の負債金が5,000万円で、親子で次のように支払う契約だったとします。
- 親が20年で3,000万円(1年150万円)
- 子供が残り20年で2,000万円(1年100万円)
親が10年支払った後、亡くなってしまった場合は、次のように変化します。
- 親が10年で1,500万円
- 子が30年で3,500万円
【デメリット②】ローンを滞納すると他の共有者にしわ寄せがいく
共有名義での住宅ローンは連帯債務型です。
共有者同士が連帯債務者ですので、例えば、子が支払えなくなったら、債務は親が負担することになります。
【デメリット③】相続問題が複雑になる
父、母、2人兄弟の4人家族で、父と兄が1/2:1/2の持分だったとします。
この状況で父が先に亡くなると、父の不動産を母親が1/2、子2人が1/4ずつ相続します。
具体的には次のように持分が変わります。
- 母が1/4を相続(25%)
- 兄は5/8(自分名義+1/8)を相続(62.5%)
- 弟は全体の1/8を相続(12.5%)
数字が複雑化しました。
利害関係が絡むことですので、関係者が増えるほど、数字以外のことも複雑化します。
【デメリット④】離婚すると財産分与が複雑になる
財産分与とは、夫婦が離婚時に、相手に財産を請求できる制度のことです。
参考)法務省「財産分与」
親子共有名義の不動産で子(夫)が離婚した場合、子の妻は離婚の財産分与として子(夫)に不動産を請求できます。
ですが、不動産が夫と夫の父親の場合は父親の所有割合がどれくらいなのかによって財産分与も変動します。
6,000万円X持分2/5=2,400万円
住宅ローンを完済済みの場合、2,400万円が夫と妻の財産のため、妻はその半分の1,200万円を請求できる。
ただし、住宅ローンを完済していない場合は、請求しない方が良いケースもあります。
親子共有名義で6,000万円で1/2ずつの負担で購入した不動産があった。
離婚までに1,200万円を支払っていたので、残債は1,800万円。
1,800万円は借金でその半分は900万円。
この状況で財産分与をすると、300万円のマイナスとなる。
【デメリット⑤】相続税か生前贈与を選ぶ
相続税とは、親が亡くなった後の財産に応じて支払う税金のことです。
贈与税とは、親が生前に財産を分け与えた財産に応じて支払う税金のことです。
生前贈与は子が相続税の支払いで困らないように実施します。
どちらがお得なのか、計算をしておく必要があります。
具体的な数字をご案内します。
相続税について
相続税には基礎控除があありますので、一定の金額まで課税対象になりません。
3,000万円+(600万円X法定相続人数)
上記の計算式にもとづいて基礎控除額を計算すると次のようになります。
3,000万円+(600万円x3)= 4,800万円
父親の資産が、親子の共有名義の不動産に現金などを加えて4,000万円の場合、相続税の支払いはありません。
国税庁のサイトに簡易の計算表がありますので、チェックしてみてください。
- 相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
引用)国税庁「相続税の税率」
生前贈与について
贈与税は毎年1月1日から12月31日までの年間110万円までが基礎控除額とされています。
110万円以下の贈与なら非課税ですが、それを超えると納税する必要があります。
父、母、兄、弟の4人家族で、兄が親子共有名義にした場合、弟のことも考える必要があります。
父親の名義分の不動産価値は1,600万円で、その他の資産は1,000万円です。
この場合、共有名義でない子の相続分は、(1,600+1,000)x0.25=650万円です。
課税対象額は650万円から110万円を控除して540万円。
贈与税の金額は、540万円に30%の税率をかけた金額から、65万円の控除をして、合計97万円です。
国税庁のサイトに簡易の計算表がありますので、チェックしてみてください。
- 贈与税の簡易計算の表
特例贈与財産の 基礎控除後の課税価格 |
税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | - |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
引用)国税庁「贈与税の速算表」
【デメリット⑥】維持費や固定資産税の分担が必要になる
共有名義の不動産の維持費の支払いや固定資産納税の責任は、親子にあります。
持分の割合に応じて負担額を算出する必要があります。
一般的には、話し合いで代表者がまとめて支払った後、共有者に請求する形が取られます。
何かの理由で親子関係がこじれると、金銭的なトラブルになります。
【デメリット⑦】修繕には全員の合意が必要になる
民法で次のように定められています。
1.各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2.共有者が1年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払っ てその者の持分を取得することができる。
勝手に修繕・改築・増築はできません。
親子関係がこじれると、何もできなくなってしまいます。
親子共有名義のデメリットへの4つの対処法
それぞれの対処法をご案内します。
【対処法①】共有持分でお金を借りる
あなたの共有持分については自由にできる権利が認められています。
ですので、共有者の親(もしくは子)への連絡や相談、同意せずに、融資の審査を受けられます。
ただし、共有持分を担保にした借入れに対応している金融機関は非常に少ないです。
【対処法②】共有持分を売却する
共有者の親(もしくは子)への連絡や相談、同意せずに売却できます。
売却する場合は、一般社団法法人 共有持分支援協会を利用するとスムーズです。
社団法人の立場で、共有持分の高値売却や一部売却、リースバックをしてくれる協会です。
売却することで共有名義から外れることができます。
【対処法③】共有持分を放棄する
共有部分の放棄とは、あなたの所有している土地や建物の持分を放棄することです。
メリット、デメリットがありますので、把握しておいてください。
詳しい解説はこちらの「共有持分の放棄とは?早い者勝ちって?」をご覧ください。
【対処法④】共有物分割請求を起こす
共有物分割請求とは、「共有名義の共有関係を解消して単独名義にしてほしい」と申し出ることです。
民法第256条1項に記載されています。
時間がかかります。
詳しい解説はこちらの「共有物分割請求とは?」をご覧ください。
親子共有名義で住宅を購入する3つのメリット
それぞれ詳しくご案内します。
【メリット①】借入金額を増やせる
住宅ローンの限度額は、1人で借りる場合は名義人の年収などで決まります。
ですが、親子共有名義の場合は、親と子の年収を合算して上限が決まります。
- 住宅ローンの限度額の違い
条件 | 限度額の目安 |
---|---|
子の年収400万円 | 2,000万円 |
親の年収600万円、 子の年収400万円の時 |
5,000万円 |
親子の年収が大きいほど、より多くの融資を受けられます。
【メリット②】住宅ローンの期間を延ばせる
親子共有名義でローンを組む場合、リレーローンを選択すれば返済期間を延ばせます。
最長で10年延ばせます。
- 期間延長について
借入条件 | 延長期間 |
---|---|
親60歳だけでのローンを組む場合 | 完済時年齢を75歳に設定しているローンでは10年 |
40歳以下の子供だけでローンを組む場合 | 返済期間は最長35年 |
子供が30~39歳で親子ローンを組んだ場合 | 返済期間は最長45年 |
期間を延長することで、月々の返済を減らすことができます。
【メリット③】住宅ローン控除を人数分受けられる
住宅ローン控除とは、年末時点での残債の0.7%を所得税や住民税から控除できる制度です。
- 金利1.66%で期間35年の例
借入条件 | 借入金額 | 初年度控除額 |
---|---|---|
子一人での借り入れ | 3,000万円 | 約262,000円 |
共有名義の親の借入 共有名義の子の借入 |
600万円 2,400万円 |
約234,800円 約58,700円 |
上記の例では、親子の場合、293,500円(234,800円+58,700円)の控除を受けられます。
一人の場合よりも、31,500円(293,500円-262,000円)も多いです。
親子共有名義で不動産を購入する2つの方法
親子共有名義でローンを組む場合、「ペアローン」と「リレーローン」の2つがあります。
それぞれご案内します。
【方法①】ペアローン
- 1つの物件に対して親子が別々にローン契約をする
- 1つの物件の返済を親子が同時に返済する
- お互いが連帯保証人になる
- 団体信用生命保険には親子ともに加入
- 親が亡くなった場合、親の支払い分の残債がなくなる
- リレーローンより借入金上限が高い
- 親子それぞれがローン審査の合格が必要
親と子が1つの物件の返済を同時に且つ別々に返済します。
ですが、片方が死亡した場合は、自分の支払いだけで済みます。
【方法②】リレーローン
- 親が組んだローンを子供が引き継いで返済する
- 子が連帯債務者となる
- 団体信用生命保険(団信)には親か子のどちらかが加入すればよい
- 返済期間を延ばすことができる
- 親が先に亡くなった場合、親の支払い分も子が払う必要がある
親が先に支払いをします。
子はその期間に住宅ローンの返済負担をしなくてすみます。
ただし、最終的には払い切る必要があります。
債務者の2人が亡くなった場合は団信が適用されます。
親子共有名義のまとめ
親子での共有名義には7つのデメリットがあります。
お金が絡むことですので、トラブルになる可能性があります。
メリットも踏まえて、親子で十分に話し合いをしてください。
ご質問やご相談があれば、ぜひ丸の内AMSにお気軽にお問い合わせください。