「共有名義にすると、どんなことで後悔するのかな?」
「共有名義のデメリットへの対処法を知りたい」
このように考えていませんか。
このページでは、共有持分の6つの後悔や後悔しないための対処法について、プロが分かりやすくご案内します。
-
不動産が共有名義になるのは、次のパターンです。
- 相続した土地が共有名義だった
- 夫婦で家(マンション)を購入する
相続した不動産と不動産を購入する場合とでは、状況が全く異なります。
日本は、超高齢化社会に突入しています。
ですので、この記事では”主に”相続した土地についてご案内しております。
共有名義の6つの後悔
それぞれ詳しくご案内していきますね。
【後悔①】有効活用ができなかった
共有名義において、所有者全員の同意が必要になる場面は次の通りです。
- 不動産全体を売却するとき
- 不動産の大規模なリフォームや用途変更するとき
- 単独の不動産として融資を受けるとき
相続や購入後に共有者が増えると、話し合いがさらに複雑化します。
その結果、不動産が活用されないまま、時間が経過することがあります。
父親が亡くなり、兄弟3人と母親の4人の共有状態となりました。
長男は賃貸化、母親は住み続けることを希望し、次男は相続税の支払いを理由に早期売却を主張しました。
意見がまとまらないまま8年が経過し、建物は老朽化して収益化や売却が困難になりました。
【後悔②】費用の負担で揉めた
共有名義では、不動産の維持や管理にかかる費用を共有者全員で分担します。
具体的には次の通りです。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 管理費
- 修繕費
- 修繕積立金(主にマンション)
- 保険料
- 賃貸物件の管理費用(収益物件の場合)
- 登記関連費用
- 公共料金(使用者がいる場合)
民法第253条では「共有者は持分割合に応じて管理費を負担する義務がある」とされています。
ですが、経済状況や認識の違いから、支払いを巡る対立が起きます。
評価額2,400万円の一戸建てを、兄弟3人で1/3ずつの割合で保有していました。
年間の固定資産税12万円を持分割合で負担する取り決めでしたが、妹が失業し半年間滞納しました。
その間は、兄と弟が肩代わりしていましたが、妹が仕事に復帰してからも、税金を支払わなかったことで対立が発生。
話し合いは進まず、対立は2年以上続きました。
【後悔③】賃料で揉めた
共有者が1人で不動産を使用する場合、他の共有者は不満を感じることがあります。
民法第249条によると、他の共有者は持分割合に応じた賃料相当額を請求できます。
ただし、賃料額や支払い頻度を巡って対立が起きることがあります。
評価額4,800万円のマンションを相続し、兄弟3人で共有名義にしました。
持分は1/3ずつですが、親の介護をした兄だけが住んでいます。
不満を覚えた弟と妹が、持分に応じた賃料相当額を要求しました。
ですが、兄が支払わず1年半が経過し、弟と妹は弁護士を通じて請求訴訟を起こしました。
【後悔④】意図しない贈与税を支払うことになった
贈与税とは、個人間で資産が無償か適正価格を大幅に下回る金額で譲渡された場合に課される税金のことです。
次のケースでは、意図せず贈与とみなされることがあります。
- 贈与税が課せられる7つのケース
贈与税が課せられるケース | 具体例 |
---|---|
①費用の肩代わり | 他の共有者の固定資産税や修繕費を代わりに支払う場合 |
②持分の変更(無償または低価格) | 適正価格を大幅に下回る金額で持分を譲渡する場合 |
③不適切な持分設定 | 実際の出資額に見合わない持分を設定した場合 |
④借入金返済の肩代わり | 他の共有者の住宅ローンや購入資金を肩代わりする場合 |
⑤賃料免除 | 他の共有者の持分割合に応じた賃料を支払わない場合 |
⑥遺産分割での不公平な持分調整 | 実際の相続割合より多い持分を譲渡する場合 |
⑦低価格での売却 | 適正価格を大幅に下回る金額で不動産を売却する場合 |
評価額3,800万円の土地を兄弟2人で共有していました。
持分は1/2ずつです。
弟の経済状況悪化により、兄が固定資産税や修繕費を3年間で計120万円肩代わりしました。
この負担が贈与とみなされ、弟に税務署から贈与税の支払いが求められました。
【後悔⑤】不動産の価値が下がってしまった
共有名義では、適切な維持管理が行われず、市場価値が下落することがあります。
その原因は、修繕費用などを巡る対立や放置です。
評価額5,000万円の一軒家を兄弟3人で共有名義で相続しました。
持分はそれぞれ1/3ずつです。
修繕費負担を巡る意見の対立で、屋根や外壁の修繕が8年以上放置されました。
その結果、雨漏りや外壁の剥がれが発生しました。
不動産の市場価値は4,700万円まで下がりました。
【後悔⑥】離婚時に揉めた
夫婦の共有名義では、離婚の際に、次のようなことでトラブルが起こりがちです。
- 売却時の分配割合は?
- どちらが住むのか?
合意できない場合、問題が長期化します。
新築マンション(評価額7,000万円)を夫婦で7/10:3/10の共有名義で購入しました。
結婚5年後に離婚が決まり、妻は持分相当の2,100万円の現金を主張しましたが、夫はローンを完済していないため拒否しました。
話し合いが進まず、最終的に調停に持ち込まれました。
共有名義には後悔もあるがメリットもある!
先に相続した共有名義の不動産のメリットをご案内し、その後で夫婦で共有名義にするメリットをご案内します。
相続した共有名義の不動産の3つのメリット
- 遺産分割を公平に行える
- 管理費・維持費を分割で支払える
- 譲渡所得税を節税できる(共有名義人分の3,000万円特別控除)
相続で共有名義にした土地では、維持費を複数の共有者で分担します。
そのため、費用負担を軽減できます。
詳しくはこちらの「土地の共有名義のメリットやデメリット」でご案内していますので、ご一読ください。
夫婦で共有名義にする6つのメリット
- 借入額の増額ができる
- 住宅ローン控除を夫婦がそれぞれ受けられる
- 専業主婦(主夫)でも共有名義にできる
- 相続税の節税ができる
- 売却時に特別控除が受けられる
- 夫婦で団信に加入できる
夫婦の場合のメリットは上記の通りです。
住宅ローン控除を夫婦それぞれが受けられるため、1人で名義を持つ場合より節税効果が高いです。
共有名義で後悔しないための5つの対処法
それぞれ詳しくご案内していきますね。
【対処法①】相続前に話し合いをする
相続前に話し合いをしておく目的は、次の通りです。
- 費用の負担を明確にする
- 賃料の負担を明確にする
- 不動産の価値が下がる前に有効活用する
事前の話し合いにより、費用や賃料負担のルールを明確にできます。
また、不動産を有効活用するための準備ができます。
【対処法②】弁護士に入ってもらう
複数の人の利害が絡む共有名義では、意見の不一致やルールの曖昧さが原因で話し合いが進まないケースがあります。
弁護士が公平な解決案を提示してくれることで、話し合いが進みやすくなります。
特に離婚時は弁護士への相談は必須です。
【対処法③】税金対策をしておく
課税される前に、次のような対策をしておいてください。
- 贈与税や相続税、譲渡税の知識を身につける
- 事前に弁護士に相談しておく
譲渡所得税は、売却や譲渡によって得られた利益に課されます。
譲渡所得税の計算式は、次の通りです。
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 譲渡費用 + 各種控除額)
相続した共有不動産を売却する場合、特定の条件を満たすと譲渡所得から3,000万円の特別控除を受けられます。
特別控除は、各共有名義人に適用されます。
【対処法④】共有持分を売却する
共有名義の不動産であっても、自分の持分だけを売却することはできます。
売却方法は2つあります。
- 仲介を利用する
- 買取業者を利用する
高額で売却したい場合は、仲介を選んでください。
仲介とは、不動産会社が買い手を探し、適正価格で市場に出すことです。
買取業者よりも高額で売却できるケースが多いです。
仲介を利用するならの社団法人の立場で対応してくれる一般社団法人共有持分支援協会をご検討ください。
【対処法⑤】共有持分で融資を受ける
自分の持分だけを担保にして不動産担保ローンを利用することができます。
不動産担保ローンとは、不動産を担保にして借入を行う融資制度のことです。
担保がある分、カードローンより低金利で、多額の借入ができます。
ただし、共有持分だけを担保に融資を行う金融機関は限られています。
利用する際は、取り扱う専門機関を探す必要があります。
共有持分の後悔のまとめ
共有持分の6つの後悔と5つの対処法をご案内しました。
事前の対策と弁護士の力を借りることで解決の道が開かれます。
思わぬ後悔やトラブルを避けるためにお役立てください。