「共有名義の固定資産税、誰が払うべきなの?」
「固定資産税、支払わなかったらどうなるの?」
このように悩んでいませんか?
このページでは、共有名義の固定資産税について、プロがわかりやすくご案内します。
目次
共有名義の固定資産税の納税についてよくある6つの疑問
- 納税義務者は誰?
- 誰かが支払わなかったらどうなる?
- 納付の割合は?
- 誰が納付する?
- 代表者はどう決まる?
- 代表者は後から変更できる?
それぞれご案内していきます。
①納税義務者は誰?
共有名義の固定資産税は、共有者全員に連帯で納付する義務があります。
地方税法第10条の2第1項に記載されています。
②誰かが支払わなかったらどうなる?
共有名義の固定資産税は、前述の通り「連帯納付」の義務があります。
そのため、共有者の誰かが支払わなかった場合、他の共有者が代わりに支払わなければなりません。
例えば、固定資産税が12万円で共有者が3人いる場合、誰かが4万円を支払わなかった場合は、他の共有者が4万円分を肩代わりする義務があります。
③納付の割合は?
納付の割合は、共有持分に応じてそれぞれ負担します。
民法第253法第1項で定められています。
④誰が納付する?
共有名義の固定資産税の納付は、一般的に代表者1名が行います。
固定資産税の納付書は代表者にだけ送付されます。
代表者は一括で納付する前後で、他の共有者に、共有持分に応じた納付額を請求します。
⑤代表者はどう決まる?
代表者の決定方法は、次の場合で異なります。
- これから共有名義にする場合
- 相続で共有名義になった場合
これから共有名義にする場合、次のポイントで代表者が選定されます。
- 物件所在地の市内に居住している人
- 物件に居住している人
- 共有持分が多い人
- 登記簿の記載順序が早い人
※自治体によって異なります
自治体は滞納リスクを回避するため「確実に納税が見込める人」を選定します。
相続で共有名義になった場合は、自治体から「相続人代表者指定届」が送付されます。
共有者で話し合い代表者を決定し、書類を提出すれば、代表者を登録できます。
書類を提出しなかった場合は、自治体が代表者を選定します。
⑥代表者は後から変更できる?
代表者は後から変更できます。
変更の場合は、役所・役場の資産税課に「代表者指定(変更)届出書」をご提出ください。
- 共有者全員から同意を得る
- 役所・役場に代表者指定届を提出する
※新代表者と旧代表者の署名・押印が必要です
共有名義の固定資産税の計算方法と納付方法、時期を解説

固定資産税の計算方法
固定資産税は、土地や家屋の資産価値に応じて算出します。
固定資産税額=固定資産の評価額×標準税率(原則1.4%※)
※自治体によって異なる場合があります
固定資産税の評価額は、国が定めた固定資産評価基準をもとに、自治体によって算出されます。
実際に固定資産税がどのくらいになるのか、シミュレーションします。
前提条件は次の通りです。
- 中古マンションを相続した
- 共有持分は母が1/2、3人兄弟が1/6ずつ
- 土地の評価額は3,000万円
- 家屋の評価額は2,000万円
- 課税床面積は100平方メートル
- 標準税率は1.4%
・土地の評価額…3,000万円×1/6(※)=500万円
※200平方メートル以下の住宅用地は、1/6の減税措置があります
・土地の固定資産税…500万円×1.4%=7万円
・家屋の固定資産税…家屋の評価額(2,000万円)×1.4%=28万円
・固定資産税の合計 7万円+28万円=35万円
負担額は次の通りです。
・母の負担額 35万円×1/2=17万5,000円
・兄弟1人あたりの負担額…1,921円×1/6=5万8,333円
※小数点以下切り捨て
固定資産税の納付方法
固定資産税の納付には、5つの方法があります。
自治体によって多少の違いはありますが、基本的に次の方法で納付できます。
- クレジットカード
- 現金払い
- 口座振替
- ペイジー決済
- キャッシュレス決済
固定資産税の納付時期
固定資産税の納付は、一般的に年4回の分割方式です。
詳しくはこちらの「固定資産税を払えないと老後にどうなるの!?8つの対処法を徹底解説」でご案内していますので、ご一読ください。
共有名義の固定資産税を滞納すると起こる2つのリスク
それぞれ詳しくご案内します。
【リスク①】延滞金がかかる
固定資産税の納付期限を過ぎると、延滞日数に応じて延滞金がかかります。
- 延滞金の税率
延滞日数 | 延滞金の税率 |
---|---|
納付期限の翌日から1か月以内 | 年率2.4% |
1か月以上 | 年率8.7% |
実際に延滞金がどのくらいになるのか、シミュレーションします。
前提条件は次の通りです。
- 固定資産税1期分5万円(納付期限:令和5年5月31日)を滞納
- 令和5年11月30日に納付する
- 共有持分は母が½、2人兄弟が⅓
■令和5年6月1日~30日までの延滞金
5万円×2.4%×30日÷365日=98.6円
■令和5年7月1日~11月30日までの延滞金
5万円×8.7%×153日÷365日=1,823.4円
延滞金は合計で、1,921円です。
延滞金は固定資産税と同様に、一般的に共有持分に応じて負担するので、負担額は次の通りです。
・母の負担額…1,921円×½=960.5円
※小数点以下切り捨て
・兄弟1人あたりの負担額…1,921円×1/3 = 640円
※小数点以下切り捨て
詳しくはこちらの「固定資産税を払えないと老後にどうなるの!?8つの対処法を徹底解説」でご案内していますので、ご一読ください。
【リスク②】財産を差し押さえられる
財産の差し押さえの前に、自治体から督促状が送付されます。
期限までに固定資産税を納めない場合、自治体は地方税法第371条に基づき、自治体は20日以内に督促状を送付しなければなりません。
督促状の送付から10日経過しても納付がない場合、自治体は財産の差し押さえを行うことができます。
その場合、自治体は財産調査を行い、財産があれば差し押さえが実行されます。
差し押さえの対象になる財産は、次の通りです。
- 共有者全員の預貯金、給与
- 共有者全員の車
- 共有不動産自体
詳しくはこちらの「固定資産税を払えないと老後にどうなるの!?8つの対処法を徹底解説」でご案内していますので、ご一読ください。
共有名義の固定資産税を負担したくない場合の3つの対処法
対処法は3つあります。
それぞれ詳しくご案内します。
【対処法①】専門の不動産買取業者に売却する
民法第206条では、自分の共有持分であれば他の共有者の同意なく、売却できることが定められています。
専門業者は、共有持分の売却に関する手続きを代行してくれるため、手間をかけずに短期間で売却できます。
共有持分支援協会は次のようなメリットがありますので、売却をお考えの方はぜひ検討してくださいね。
- 高値・早期で売却できる
- 他の共有者との連絡や交渉、同意が不要
- 一部だけを売却できる
- リースバックもできる
【対処法②】他の共有者に売却する
買い取る側は持分が増えるため、メリットと感じる方もいます。
【対処法③】共有持分を放棄する
民法第206条で、自分の共有持分であれば他の共有者の同意なく、放棄できると定められています。
放棄された持分は民法第255条に基づき、一般的に共有者に移ります。
共有者が複数いる場合には共有持分の割合に従って、持分が割り当てられます。
詳しくはこちらの「共有持分の放棄とは?早い者勝ちって?メリットとデメリットを解説!」でご案内していますので、ご一読ください。
固定資産税が共有名義の状態のよくある4つのトラブルと対策
よくあるトラブルは4つあります。
それぞれ詳しくご案内します。
【トラブル①】共有者が固定資産税を支払わなかった
固定資産税に関わるトラブルの中でも、よくある問題です。
対策として、代表者が一時的に立て替えてそのお金を回収できる求償権を使用し、他の共有者へ請求してください。
ただし、時効により求償権が消滅する場合があるので注意してください。
求償権が消滅する条件は次の通りです。
- 権利を行使できることを知った時から5年間行使しない
- 権利を行使できる時から10年間行使しない
【トラブル②】共有者が共有持分を放棄した
放棄された持分が他の共有者に移ると、その共有者に複数の税金が課税されます。
課税の可能性がある税金は、次の通りです。
- 贈与税
- 不動産取得税
この納税でトラブルになることがあります。
なお、共有持分は前述の通り、民法第206条に基づき、他の共有者の同意なく放棄や売却ができます。
放棄の手続きには、基本的に他の共有者の協力が必要です。
ですが場合によっては、単独での持分放棄もできます。
【トラブル③】共有者が死亡した
共有者が死亡すると、その共有持分は、他の相続人に引き継がれます。
相続人が共有持分について把握をしていなければ、次のようなことが起こることがあります。
- 固定資産税の納付が滞ってしまう
- 納付までに時間がかかる
対策として、事前の立て替えや請求のルールの取り決めておくことをご検討ください。
【トラブル④】共有者が自己破産した
共有者が自己破産をした場合、当事者の共有持分のみ競売にかけられ、納税義務は新たな共有者へと移ります。
滞納のトラブルとなる前に、新たな共有者としっかり連絡をとり、支払いや連絡方法を事前に確認してください。
まとめ
固定資産税の共有名義で知っておきたい6つのポイントをご案内しました。
納税者は誰なのか、払わないとどうなるか、ご理解いただけたかと思います。
共有名義の不動産でお悩みの方は、ぜひ丸の内AMSにお気軽にお問い合わせください。