相続不動産を売却する流れは?売却費用や節税方法も解説!

投稿日:2025年1月22日

「相続した不動産を売却する手順は?」
「相続した不動産を売却したら、いくら税金がかかる?」

この記事では、相続不動産を売却する際の流れと、発生する費用や税金について、プロが分かりやすくご案内します。

この記事の作成者

融資部 部長
浜崎 雷Rai Hamazaki

【資格】管理業務主任者、宅地建物取引士
お客様の大切な所有不動産の評価を最大限に、ゆとりある生活のサポートをさせていただきます。「お客様の明日のために、今日、自分は何ができるか」を考え、日々奮闘しています。

相続した不動産を売却する4つのメリット

それぞれ詳しくご案内します。

【メリット①】現金化できる

相続した不動産を売却することで、まとまった資金を調達できます。

現金を手に入れることで、

  • 生活費に充てる
  • 土地や自動車などの購入費用に充てる
  • 他の投資資金に充てる

といった活用ができます。

【メリット②】維持管理の負担がなくなる

相続した土地や建物を売却せずに所有していると、

  • 固定資産税・都市計画税
  • 修繕費
  • 管理費

などの維持費がかかります。

売却すれば金銭的な負担や管理の手間が無くなります。

特に遠方に住んでいて管理が難しい場合や、老朽化が進んで修繕費がかかる物件の場合には、大きなメリットです。

【メリット③】遺産を分配しやすくなる

相続人が複数人いる場合、不動産は平等に分割できません。

そのため、話し合いが長期化したり、相続人間でトラブルになったりするケースがあります。

不動産を売却して現金化すれば遺産分配を公平に進めやすくなります。

【メリット④】近隣トラブルを避けられる

相続した建物を空き家のまま放置することで発生するトラブルは次の通りです。

  • 建物が老朽化して倒壊する
  • 生い茂った庭の草木が他人の敷地や道路にはみ出す
  • 害虫や害獣の住みかとなる

その結果、周辺の住民に迷惑をかけることになります。

遠方に住んでいる場合は、近隣トラブルを未然に防ぐために、売却をご検討ください。

相続した不動産を売却する3つのデメリット

それぞれご案内します。

【デメリット①】所有権がなくなる

不動産を売却すると、その不動産に対する所有権を失います。

所有権を失うと、それ以降、住んだり賃貸物件として活用したりできません。

また、思い出の詰まった家や土地を手放すのは大きな決断ですので、相続人同士でよく話し合って決めてください。

【デメリット②】収益が得られなくなる

不動産を賃貸物件として運用すれば家賃収入を得られます。

ですが売却すると収益は得られません。

ただし、運用しても赤字になることもあります。

安定した収益源として活用できる不動産かどうかを判断してください。

【デメリット③】譲渡所得税が課税されることがある

不動産を売却して利益が出た場合、譲渡所得税がかかります。

譲渡所得税の計算式

譲渡課税所得=売却価額-取得費+譲渡費用-特別控除額

譲渡所得税=譲渡課税所得×税率

相続した不動産の売却で利益が出る見込みがある場合は、税金のために現金を準備しておく必要があります。

売却前に知っておきたい相続不動産の4つの分割方法

相続不動産の4つの分割方法
  1. 換価分割
  2. 現物分割
  3. 共有分割
  4. 代償分割

各分割方法について、事例を挙げてご案内します。

【方法①】換価分割

換価分割(かんかぶんかつ)は、不動産を売却し、その売却代金を相続人間で分割する方法のことです。

メリットは相続財産を公平に分割しやすいことです。

相続不動産を3,000万円で売却した場合

相続人が2人なら、それぞれ1,500万円ずつ、相続人が3人であれば1,000万円ずつ分割できます。

なお、相続した家に相続人が住む場合は、売却できません。

【方法②】現物分割

現物分割は、不動産などの相続財産をそのままの形で相続人に引き継ぐ方法のことです。

例えば、不動産は長男、預貯金は次男、株式は三男が相続するといったことです。

土地を相続した場合には、「分筆」による現物分割が可能です。

分筆とは

登記簿上の一つの土地を複数の土地に分けて登記をする手続きのこと。

ただし、条例などによって土地の分割が禁止されている地域がある。

現物分割のメリットは相続手続きが簡単なことですが、デメリットは相続人間で不公平になりやすいことです。

【方法③】共有分割

共有分割は、不動産を複数の相続人で共有して相続する方法です。

各相続人が法定相続割合に応じた持分を取得して、相続人全員で共有状態にします。

共有名義のため、次のような活用をする場合は、共有者全員の同意が必要です。

  • 単独不動産として売却
  • 賃貸運用
  • 大規模修繕

また、共有者が死亡して再度相続が発生した場合、共有持分がさらに細分化します。

誰が権利者かわからなくなるため、トラブルにつながることがあります。

【方法④】代償分割

代償分割は、1人の相続人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う分割方法です。

3,000万円の価値がある不動産を兄弟3人で相続する場合

長男が不動産を相続し、次男と三男にそれぞれ1,000万円ずつ代償金を支払うことで、公平に分割します。

この方法は、不動産の所有者となる相続人に相応の現金が必要です。

相続した不動産を売却する流れ

各ステップを詳しくご案内します。

【流れ①】相続が発生する

被相続人の死亡によって相続が発生します。

一般的には、被相続人の葬儀を済ませ、四十九日法要が終わってから相続に関しての話し合いを開始します。

【流れ②】相続人と相続する財産を確認する

まずは、遺言書の有無をご確認ください。

遺言書がある場合は、その内容が最優先なので、遺言書に従ってください。

遺言書がない場合は、相続人と相続する財産を確認し、遺産分割協議を行います。

  • 相続する財産の例
プラスの財産 不動産、預貯金、株式・債券などの有価証券、保険金
マイナスの財産 借金、ローン残債、未払いの税金・医療費

【流れ③】遺産分割協議を行う

遺産分割協議とは、相続人全員で相続財産をどのように分割するかを決める話し合いのことです。

相続税の申告が必要な場合、相続が発生したことを知った日から10か月以内に申告する必要があります。

ですので、10か月以内に遺産分割を完了します。

相続人が複数人いる場合、遺産分割協議が終了するまでは、相続人全員の共有財産です。

そのため自由に処分できません。

協議書を作成し、法的に証明するために全員が署名捺印します。

【流れ④】名義変更・相続登記を行う

相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更する手続きのことです。

2024年4月1日から義務化されたため、必須です。

  • 相続登記を行う条件と期限
条件 期限
相続によって不動産を取得した場合 所有権の取得を知った日から3年以内
遺産分割が成立した場合 遺産分割が成立した日から3年以内
令和6年4月1日以前に相続が開始された場合 相続開始から3年以内
(3年間の猶予期間がある)

相続登記を行う際は、次の書類を法務局に提出します。

  • 相続登記に必要な書類
書類 入手場所
被相続人の戸籍謄本 取得者の最寄りの市区町村役場
不動産を取得する相続人全員の戸籍謄本
被相続人の住民票の除票 住所地の市区町村役場
不動産を取得する人の住民票
相続不動産の固定資産評価証明書 不動産所在地の市区町村役場
または市税(都税)事務所
登記申請書 申請人が作成

必要な書類が多いので、司法書士への依頼をご検討ください。

【流れ⑤】不動産会社へ依頼する

相続登記の手続きを終えたら、不動産を売却する仲介をしてくれる不動産業者を探し、媒介契約を結びます。

  • 3種類の媒介契約
契約の種類 特徴
専属専任媒介契約 ・1社のみに依頼できる
・不動産会社が依頼者に進捗状況を報告する義務がある
・自分で買主を見つけた場合も不動産会社の仲介が必要
・不動産会社にとって仲介手数料が確保できるため、積極的な売却活動が期待できる
専任媒介契約 ・1社のみに依頼できる
・不動産会社が依頼者に進捗状況を報告する義務がある
・自分で買主を見つけて不動産業者を介さずに売却することが可能
一般媒介契約 ・同時に複数の不動産業者に仲介依頼できる
・制限が少なく、比較的自由に売却活動ができる
・不動産会社が依頼者に進捗状況を報告する義務がない
・不動産会社にとって旨味がすくないため、積極的な売却活動が期待できない

不動産会社に売却を依頼するときに必要な書類は次のとおりです。

  • 売却時に必要な書類
必要書類 一戸建て マンション 土地
登記簿謄本または登記事項証明書
売買契約書
重要事項説明書
登記済権利書または登記識別情報
本人確認書類
実印 ・印鑑証明書
固定資産税納税通知書
固定資産税評価証明書
物件の間取り図
設備の仕様書
土地測量図・境界確認書
建築確認済証・検査済証
建築設計図書・工事記録書
マンションの管理規約または使用細則
耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書

(◯⋯必須、△⋯任意)

不動産の種類によって必要な書類が異なります。

依頼する不動産会社に確認しながら用意してください。

【流れ⑥】売買契約を締結する

買主が見つかったら売買契約を結びます。

売買契約を締結する当日の一般的な流れは次の通りです。

  • 売主と買主の顔合わせ
  • 売却する不動産の説明
  • 売買契約書のへ記入・押印
  • 手付金の受け取り

後日トラブルに発展しないように、契約書の内容を確認してください。

【流れ⑦】残金決済・引き渡しを行う

最後に、手付金以外の残代を決済し、不動産を買主に引き渡して売却が完了します。

引き渡し当日までに、次の事を済ませておいてください。

  • 引っ越し・片付け
  • 電気・水道・ガスなどの契約解除
  • 買主へ渡す設備関係の説明書やカギの準備

相続不動産の売却に必要な4つの費用

相続不動産の売却時にかかる4つの費用
  1. 司法書士報酬
  2. 書類取得費用
  3. 仲介手数料
  4. 遺品・残置物撤去費用

それぞれご案内します。

【費用①】司法書士報酬

司法書士報酬は、相続登記の手続きを司法書士に依頼する費用のことです。

金額は5〜15万円程度が相場です。

詳しくは依頼する司法書士にお問い合わせください。

【費用②】書類取得費用

書類取得費用は、相続登記に必要な書類を市(区)役所で発行してもらう手数料のことです。

戸籍謄本や不動産の登記事項証明書など、それぞれ数百円の発行手数料がかかります。

郵送で手続きする場合、郵送料が必要になることがあります。

【費用③】仲介手数料

仲介手数料は、不動産会社に売却の仲介を依頼した際に支払う手数料のことです。

不動産の売却金額によって上限が異なります。

  • 売却金額と手数料
売却金額 仲介手数料の上限
200万円以下 売却金額×5%+消費税
200万円超400万円以下 売却金額×4%+2万円+消費税
400万円超 売却金額×3%+6万円+消費税

【費用④】遺品・残置物撤去費用

相続不動産を売却する際、被相続人の遺品や残置物の撤去、清掃などにも費用がかかります。

目安は合計30〜80万円程度です。

遺品・残置物の量によって異なります。

相続不動産の売却で発生する4つの税金

相続不動産の売却時にかかる4つの税金
  1. 登録免許税
  2. 相続税
  3. 譲渡所得税・住民税
  4. 印紙税

それぞれ具体的にご案内します。

【税金①】登録免許税

登録免許税は、不動産の登記申請にかかる税金です。

この税金は、「不動産の固定資産評価額×0.4%」と定められています。

固定資産税評価額が1,000万円であれば、4万円です。

【税金②】相続税

相続税は、遺産総額のうち相続税の対象となる財産(課税財産)から基礎控除を差し引いた金額に対してかかる税金です。

相続税額の計算方法
  1. 基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
  2. 課税遺産総額=相続税の対象となる財産(課税財産)-基礎控除
  3. 相続税額=課税遺産総額×税率(10〜55%)

例えば、法定相続人が子3人、相続税の対象となる財産(課税財産)が6,000万円の場合の相続税額は次の通りです。

  • 基礎控除=3,000万円+(600万円×3)=4,800万円
  • 課税遺産総額=6,000万円-4,800万円=1,200万円
  • 各相続人の相続税額=1,200万円×税率10%=120万円

正確な計算のために、税理士にご相談ください。

【税金③】譲渡所得税・住民税

所得税・住民税は、不動産を売却して利益が出た場合、その売却益(譲渡所得)にかかる税金です。

不動産の保有期間によって、税率が次のように異なります。

  • 保有期間と税率、税金の例
保有期間 税率
(所得税+復興特別所得税+住民税)
売却益(譲渡所得)が
1,000万円のときの税額
5年超 20.315% 2,031,500円
5年以下 39.63% 3,963,000円

【税金④】印紙税

印紙税は、不動産の売買契約書作成にかかる税金です。

売却する不動産の価格に応じて異なり、200円〜最大48万円がかかります。

相続不動産を売却した際に利用できる2つの控除

相続不動産の売却時に利用できる2つの控除
  1. 取得費加算の特例
  2. 相続空き家の3,000万円特別控除の特例

具体的な事例とともにご案内します。

【控除①】取得費加算の特例

「取得費加算の特例」とは、相続した不動産にかかった相続税の一部を、取得費に加算して譲渡所得税を計算できる制度のことです。

この特例を適用できれば、譲渡所得税・住民税を大幅に節税できます。

この特例には、次の適用要件があります。

適用要件
  1. 相続または遺贈によって財産を取得した
  2. 財産を取得した人物に相続税が課税された
  3. 相続税の申告期限翌日から3年以内に相続した財産を売却した

​​なお、相続税の申告期限は「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」ですので、相続開始を知ってから3年10か月以内に売却しなければ、取得費の特例は利用できません。

次の計算式で算出できます。

譲渡所得の取得費に加算される金額

取得費に加算する相続税額=相続税額×{売却した財産の相続税評価額÷(相続税の課税価額+債務控除額)}

具体的に次のケースでこの特例を適用した場合とそうでない場合の税額をご案内します。

ケース例
  1. 相続した土地は故人が4,000万円で購入したもの
  2. 相続した土地を8,000万円で売却した
  3. 売却した土地にかかった相続税は680万円
  4. 売却費用は320万円

【特例を適用しない場合】

  • 課税譲渡所得:8,000万円-(4,000万円+320万円)=3,680万円
  • 譲渡所得税・住民税:3,680万円×20.315%=747万5920円

【特例を適用した場合】

  • 課税譲渡所得:8,000万円-(4,000万円+320万円+680万円)=3,000万円
  • 譲渡所得税・住民税:3,000万円×20.315%=609万4500円

この条件では、特例を適用すれば、合計約138万円も節税できます。

【控除②】相続空き家の3,000万円特別控除の特例

「相続空き家の3,000万円特別控除の特例」とは、相続によって取得した空き家を売却した際の譲渡所得から最大3,000万円まで控除できる制度のことです。

適用すれば譲渡所得を軽減できるため、税金(譲渡所得税+住民税)を大幅に節税できます。

この特例の適用要件は次の通りです。

相続した空き家の適用要件
  1. 空き家だけでなく土地も相続した
  2. 建物が1981(昭和56)年5月31日以前に建築された
  3. 被相続人が相続開始まで住んでいた
  4. 相続開始から売却まで空き家だった
売却時の状況の適用要件
  1. 相続してから3年後の年の12月31日までに売却した
  2. 第三者に売却した
  3. 売却額が1億円以下である
  4. 耐震安全基準等に適合した状態、または建物を取り壊した状態で売却した

具体的なケースで適用した場合としない場合の税額をご案内します。

ケース例
  1. 相続した土地は故人が4,000万円で購入したもの
  2. 相続した土地を8,000万円で売却した
  3. 売却費用は200万円

【特例を適用しない場合】

  • 課税譲渡所得:8,000万円-(4,000万円+200万円)=3,800万円
  • 譲渡所得税・住民税:3,800万円×20.315%=771万9700円

【特例を適用した場合】

  • 課税譲渡所得:8,000万円-(4,000万円+200万円+3000万円)=800万円
  • 譲渡所得税・住民税:800万円×20.315%=162万5200円

この条件では、特例を適用すれば、合計約609万円も節税できます。

相続した不動産を売却する際の3つの注意点

それぞれご案内します。

【注意点①】3年以内を目安に売却する

先ほどご案内したとおり、相続不動産を売却した際に利用できる2つの控除の適用期限が3年以内であるためです。

正確には相続開始から3年を少し過ぎても間に合います。

ですが、不動産の売却には一般的に半年以上かかります。

ですので、余裕を持って相続開始から3年以内に手続きしてください。

【注意点②】相続不動産の売却に強い不動産会社を探す

不動産会社は、会社ごとに、「賃貸仲介」「マンション売買」など、得意とする分野が異なります。

相続不動産の売却を得意とする不動産会社に依頼すれば、最適価格で売却できる可能性が高いです。

相続に慣れていない業者に依頼すると売却がスムーズにいかないことがあります。

期限が迫っている場合は相続に強い会社を選んでください。

【注意点③】共有名義の不動産の売却には共有者全員の同意が必要

共有者全員の同意には、「売ること自体の同意」と「価格の同意」が必要です。

相続した不動産を売却すること自体の同意を得られたら、売却価格について話し合っておいてください。

「いくら以上なら売る」という売却価格の最低ラインを決めておくと、購入希望者との価格交渉をスムーズに進められます。

まとめ

相続不動産を売却する際の流れと、発生する費用や税金について解説しました。

気になる方は、一度、相続不動産の売却を得意とする不動産会社に相談してみてください。

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