共有持分の抵当権が実行されたらどうなる?競売への5つの対策を解説

投稿日:2025年1月18日

「裁判所から競売開始決定通知書が届いたけど、どうすればいいの?」
「競売されるとどうなってしまうんだろう?」

このように考えていませんか?

この記事では、共有持分の抵当権の実行(競売)によって落札されると起こることや対策を、プロが分かりやすくご案内します。

この記事の作成者

大石 奈津子Natsuko Oishi

【資格】賃金業務取扱主任者
大手金融機関でローンアドバイザーとして8年、大手保険会社で5年、これまで金融業界一筋でキャリアを積んで参りました。今までの経験と知識を生かしてお客様へのきめ細やかなサポートを行って参ります。

共有持分の抵当権とは?競売とは?

ご案内していきます。

共有持分の抵当権とは?

抵当権とは?

所有者(債務者)が金融機関(債権者)から借入する際、担保にする不動産に設定する担保権のことです。

返済ができなくなると債権者は抵当権を実行して、担保にした不動産を競売にかけます。

共有持分の抵当権とは?

複数の所有者がいる不動産のうち、自分の持分だけを担保に設定する権利のことです。

つまり、1人の共有者が、所有する自身の共有持分だけを担保にしてお金を借入できるということです。

抵当権を設定する際、他の共有者の同意を得たり、連絡したり必要はありません。

ただし、持分の一部だけに抵当権を設定することはできません

法的に所有権の一部だけに設定することは認められていないからです。

参照)Wikipedia「1899年(明治32年)12月22日民刑2080号回答

競売とは?

競売とは債務者が返済できない場合に、金融機関(債権者)が裁判所に申し立てて、担保の共有持分の不動産を売却する制度のことです。

競売の流れは次の通りです。

流れ
  1. 一括返済の請求
  2. 競売開始決定の通知
  3. 現況調査
  4. 入札通知・情報開示
  5. 開札・売却許可決定
  6. 代金納付・所有権移転

代金納付・所有権移転までの期間は住宅ローン滞納から12~18ヶ月です。

共有持分の抵当権が競売になる2つのパターン

2つのパターン
  1. 住宅ローンを滞納する
  2. 共有者が自分の持分を担保に借入している

順番にご案内します。

住宅ローンを滞納して競売になる事例

夫婦でペアローンを利用して銀行からそれぞれ1,500万円ずつ、合計3,000万円の住宅ローンを組みました。

その後、夫の収入が減りローンの支払いができなくなってしまい、滞納が発生しました。

銀行からの督促状に対応しなかったために、一括返済を請求されました。

そのまま支払いができず、最終的に金融機関が裁判所に競売の手続きをして、自宅は競売にかけられてしまいました。

共有者が自分の持分を担保に借入して競売になる事例

AさんとBさんが物件を共有で保有しています。

Aさんは事業のために自分の持分だけで借入しました。

ですがAさんの事業がうまくいかず、返済できなくなり、金融機関は担保権を行使しました。

Aさんの持分は競売で落札されて、Bさんは他人のC社と物件を共有することになりました。

共有持分の抵当権の競売後に起こりうる3つのこと

順番にご案内いたします。

【事例①】住宅ローンが残っている場合は追い出される

住宅ローンが残っている物件では、抵当権が建物全体にかけられるからです。

住宅ローンが残っている場合の事例

夫が住宅ローン(ペアローン)の支払いができなくなり、競売されることになりました。

夫のローンの抵当権が実行されると、妻の持分を含めた建物全体が競売にかかります。

最終的に2人共、物件から退去しなければいけなくなりました。

【事例②】持分の買取または売却を迫られる

不動産買取業者は、単独の不動産として活用することを目的にしているからです。

持分の買取の事例

買取業者D社が競売で債務者Eさんの持分を買取りました。

単独で物件を所有したほうが価値が上がるため、D社は共有者のFさんに持分を売ってほしいと持ちかけてきました。

Fさんは他人と共有状態になるのが嫌だったので、D社の取引に応じて持分を売却しました。

悪質な業者は相場より安い額で買い取ろうとしてきます。

買取を拒否すると、業者は共有物分割請求をします。

【事例③】共有物分割請求訴訟される

共有物分割請求訴訟とは裁判所に共有物の分割を求める手続きのことです。

買取(または売却)に共有者に応じてもらうために訴訟します。

最終的に、裁判所は次のいずれかの分割方法を命じます。

  • 分割方法
分割方法 定義
現物分割 1つの土地を持分に応じて分けること
代償分割 共有者に他の共有者の持分を買取らせること
換価(かんか)分割 競売で売却した代金を持分に応じて分け合うこと

請求があると、裁判所は最初に現物分割か代償分割を検討します。

和解しない場合、裁判所は換価分割を命じます。

換価分割とは、競売した不動産の売却益を、共有者と落札者が持分に応じて分け合うことです。

共有持分の抵当権の実行(競売)への5つの対策

共有持分の競売への対策は5つあります。

状況によって行える方法が次のように異なります。

  • 状況別の対策
状況 任意売却 持分の買取 競売で落札 買取業者に売却 地代や権利の交渉
競売前 × ×
競売中 ×
落札後 × ×

それぞれご案内いたします。

【対策①】任意売却する

任意売却とは債権者(金融機関)に交渉をして抵当権を抹消してもらい、不動産を売却することです。

任意売却は市場価格に近い金額で売却できます。

ただし、売却するためには共有者全員が同意しなければいけません。

落札後に任意売却することはできません。

【対策②】持分を買取る

他の共有者は持分を買い取れます。

落札前なら共有者から、落札後なら落札者から買取ります。

共有者から買い取る場合、買取価格が安すぎると債権者は詐害(さがい)行為取消権を行使します。

詐害行為取消権とは、債務逃れをするために財産を手放す行為を阻止する権利のことです。

この権利が認められると売買契約は取り消されます。

詐害行為取消権の事例

GさんとHさんの2人で、持分1/2ずつで共有している不動産(各3,000万円)があります。

Gさんは持分で融資を受けましたが、返済ができなくなりました。

Gさんは債務逃れをするために、Hさんに自分の持分を300万で売却しました。

金融機関はHさんに返済を請求することはできません。

金融機関はこれ以上の返済が受けられず、このままでは競売にもかけられないため、貸し倒れになってしまいます。

そこで金融機関は裁判所に詐害行為取消権を請求しました。

最終的に請求は認められて売買は無効になりました。

Gさんの持分は競売にかけられ、金融機関は債権の回収ができました。

【対策③】競売で落札する

競売で落札すれば、共有者は不動産が第三者の手に渡ることを回避できます。

ただし、必ず落札することができるとは限りません。

【対策④】買取業者に売却する

自分の持分だけを買取業者に買取ってもらうことで共有状態を解消できます。

落札後でも買取りできます。

他の共有者の許可は必要ありません。

買取相場は次の通りです。

共有持分の売却額の計算式
  1. 持分の割合×市場価値=持分価格
  2. 持分価格×30~60%=売却額の相場

詳しくはこちらの「共有持分を売却する時の相場の算出方法と具体例」でご案内していますので、ご一読ください。

【対策⑤】地代や権利の交渉をする

競売によって、土地と建物の所有者が別の人になると、土地の利用について法定地上権の期間と地代を、落札者と交渉しなければいけません。

  • 2種類の地上権
種類 概要
地上権 他人の土地を利用できる権利のこと
法定地上権 土地と建物の所有者が別の人になったときに、法律で自動的に与えられる権利のこと

法定地上権が成立すると、土地の所有者は建物の所有者に地代を請求できます。
地代の相場は「固定資産税の3~4倍」または「更地評価額の1%」です。

土地が落札される事例

Iさんは土地全体と建物の1/2、Jさんが建物の1/2を持っています。

Iさんは土地を担保に借入しました。

その後、Iさんの支払いが滞り、土地が競売にかけられて落札されました。

土地が落札されたため、IさんとJさんは落札者に地代を支払います。

建物が落札される事例

Kさんは土地全体と建物の1/2、Lさんが建物の1/2を持っています。

Kさんは建物を担保に借入しました。

その後、Kさんの支払いが滞り、建物が競売にかけられて落札されました。

建物が落札されたため、Kさんは落札者に地代を請求します。

具体的な金額は話し合いによって決まります。

話し合いで決まらない場合は裁判で決めます。

共有持分の相談先や売却先を選ぶ6つのポイント

6つのポイント
  1. 買取実績が多い業者である
  2. 宅地建物取引業の免許がある
  3. 買取業者の口コミ・評判が良好である
  4. 複数の業者で比較する
  5. 弁護士と提携している
  6. 誠実で丁寧な対応である

選ぶポイントは6つあります。

詳しくはこちらの「共有持分の買取業者を選ぶ6つのポイント」でご案内していますので、ご一読ください。

共有持分の相談先・売却先3選

共有持分の買取業者の内、おすすめの3社をご案内いたします。

【おすすめ①】(一社)共有持分支援協会

共有持分支援協会は共有持分の相談を行っています。

他社では行っていない持分の一部売却やリースバックに対応しています。

対象地域は東京・神奈川・埼玉・千葉の一都三県です。

【おすすめ②】丸の内AMS

丸の内AMSは20年以上の実績を持つノンバンクです。

共有持分の買取査定に特化しています。

買取だけでなく、他社ではできない共有持分での借入に対応しています。

【おすすめ③】AlbaLink

AlbaLinkは共有持分の買取を専門に行う不動産会社です。

迅速な査定と買取手続きを行います。

共有不動産についての相談に幅広く対応しています。

共有持分の抵当権のまとめ

共有持分の抵当権が実行されて、競売にかけられた時の対策をご案内しました。

専門会社に相談するなど、あなたの状況に合わせて対応してください。

丸の内AMSへお気軽にお電話くださいませ

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