「親が亡くなって不動産を相続したけど、共有持分って何?」
「離婚するんだけど、夫婦で共有で買ったマンションってどうしたらいいの?」
人生の大きな節目で登場する共有持分の不動産。
この記事では、共有持分とは何か?メリット・デメリット、共有状態を解消する方法などを、プロが分かりやすくご案内します。
目次
共有持分とは?
共有持分とは、1つの不動産を複数人が共有して所有する際の所有権の割合のことです。
「きょうゆうもちぶん」と読みます。
共有する不動産のことを「共有不動産」、共有で所有している人のことを「共有者」といいます。
共有持分はあくまで権利の割合であり、実際の土地面積の割合などを指すわけではありません。
共有持分の割合の決め方
共有持分が発生するケースは主に次の2つです。
- 不動産購入時
- 相続による不動産取得時
マンションを夫婦で購入するなど、複数人で不動産を購入する場合、共有持分の割合は、原則負担した額で決まります。
自由に割合を決められますが、一般的には負担額の割合と持分の割合を一致させます。
他の共有者と揉める可能性があるためです。
相続による不動産取得時の共有持分の割合は、法定相続分や遺言、遺産分割協議などによって決まります。
よくある共有持分の事例
- 親の不動産を兄弟姉妹の複数人で相続した
- 夫婦や親子で資金を出し合って不動産を購入した
- 私道を複数の近隣住民で所有している
具体的にご案内しますね。
- 例えば、資産価値3,000万円の不動産を所有していた親が亡くなり、兄弟3人でそれぞれ1,000万円分ずつ相続した場合、共有持分は1/3:1/3:1/3です。
- 例えば、3,000万円の住宅を夫が2,000万円、妻が1,000万円負担して購入した場合、共有持分は2/3:1/3です。
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私道に隣接する土地を所有する複数の住民が、その私道を共有で所有するケースがあります。
例えば、1つの私道に4つの土地が隣接している場合、私道の共有持分は1/4:1/4:1/4:1/4です。
なお、私道の共有持分の有無やその割合は、公図や登記簿を確認することで調べられます。
共有持分の民法上規定されている4つの権利と制限
それぞれ具体的にご案内します。
①共有物の使用(民法第249条)
- 第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
各共有者は、共有物全体について、共有持分に応じた範囲で使用できます。
例えば、AとBの共有持分の割合が1/2:1/2の場合、AとBは土地の半分ずつしか使用できないのではなく、土地全体を半年ずつ交代で使用できます。
Aが自分の共有持分を超えて使用している場合、Bに対して、対価を償還する義務があります。
つまり、Aが土地全体を常に1人で使用している場合、BはAに対して対価を請求できます。
②共有物の変更(民法第251条)
- 第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
各共有者は、他の共有者全員の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができません。
ただし、軽微な変更であれば共有者全員のではなく、各共有者の持分の価格の過半数で決定できます。
例えば、AとBの共有持分の割合が2/3:1/3の場合、、過半数の持分を有するAは単独で共有物に変更を加えられます。
全員の同意が必要となる変更は次の通りです。
- 共有物の売却
- 共有建物の増改築
- 共有不動産全体に抵当権を設定する
共有物の管理(民法第252条)
- 第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
共有物の管理の場合、各共有者の持分の価格の過半数で決定されます。
共有物の管理とは、共有物を利用・改良する次のような行為です。
- 共有不動産の第三者への賃貸
- 共有建物の改装
共有物の保存(民法第252条)
- 第二百五十二条
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
各共有者は、単独で共有物の保存行為を行うことができます。
共有物の保存とは、共有物の現状を維持するための行為をいい、例えば次のようなものがあります。
- 共有物を不法占有している者に対する明渡請求
- 共有不動産に無権利者の登記がなされている場合の登記の抹消請求
共有持分の3つのメリット
それぞれ詳しくご案内します。
【メリット①】住宅ローンの審査に通りやすくなる
共に収入のある夫婦や親子の共有名義であれば、より安定していると判断してもらいやすいためです。
住宅ローンの審査に通るかどうかは、購入者の収入や雇用形態、資産などが影響します。
夫婦や親子がペアローンや連帯債務などの方法で住宅ローンを組むことで、単独名義で購入する場合に比べて借入れしやすいです。
この場合、購入した不動産は共有名義で登記し、それぞれが負担した額に応じて共有持分を所有します。
【メリット②】相続税の節税になる
不動産を夫婦で共有名義にしていて一方が亡くなった場合、相続税が課税されるのは、その持分に応じた評価額に対してのみで済むためです。
- 夫が亡くなった際に妻にかかる相続税の課税対象は、2,000万円分(3,000万円×2/3)で済みます。
【メリット③】住宅ローン控除を共有者ごとに受けられる
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住宅を購入した際に一定の条件を満たすと、入居した年から最長で13年間、年末時点での住宅ローン残高の0.7%分を所得税等から控除できる制度です。
夫婦2人の共有名義で不動産を購入した場合、それぞれに住宅ローン控除が適用されます。
- 1人分の控除額は21万円(3,000万×0.7)です。
夫妻両方に所得がある場合、それぞれが所得税から21万円の控除を受けられます。
なお、夫妻がそれぞれ住宅ローン控除を受けられるのは、「ペアローン」または「連帯債務」で借入れした場合のみです。
連帯保証での借入れは控除の対象外となりますので、注意してください。
共有持分の4つのデメリット
それぞれ詳しくご案内します。
【デメリット①】自由に売却できない場合がある
共有名義の不動産全体を売却する場合、民法にも規定のあるとおり、共有者全員の同意が必要です。
共有者全員とスムーズに話がつくのであれば問題ありません。
ですが、反対する人や連絡がつかない人が1人でもいると売却できません。
ただし、自分の持分だけであれば同意がなくても自由に売却できます。
【デメリット②】持分だけの売却の場合は売却金額が低い
共有持分のみの不動産は活用するのが難しく、なかなか購入したいと考える人がいません。
そのため、持分だけ売却する場合、安価(50〜70%程度)になることがほとんどです。
- 1人あたり1,000万円分の持分があることになります。
ですが、このうち1人が自分の持分だけを売却する際には、1,000万円では売却できず、500〜700万円(50〜70%)で買取りされることが多いです。
【デメリット③】贈与税がかかる場合がある
実際には共有持分を贈与していなくても、贈与とみなされることがあるためです。
贈与とみなされるのは、次の3つの場合です。
- 不動産を購入したときの負担割合と持分割合に差がある場合
- 共有者の1人の収入が無くなった場合
- 共有者の1人が共有持分を放棄した場合
原則として、不動産を購入した際に負担した額の割合と共有持分の割合は一致させます。
負担割合以上の持分割合で登記すると、持分割合を超える分だけ贈与したとみなされ、贈与税が課されます。
- 3,000万円の不動産を夫が2,000万円、妻が1,000円負担して購入した。
にもかかわらず、持分割合を1/2:1/2とした場合、夫が500万円分の持分を妻に贈与したとみなされる。
住宅ローンを組んでいた際に共有者の1人の収入が無くなった場合も同様です。
収入が無くなった共有者に対して他の共有者が持分を贈与したとみなされるケースがあります。
【デメリット④】権利関係が複雑になりトラブルにつながりやすい
共有持分は相続の対象ですが、共有状態が長年続いたり、相続が複数回発生したりすることで権利関係が複雑になります。
そうなると、誰がどれだけの持分を有しているのか分からなくなり、管理や処分が面倒になります。
共有不動産にかかる税金や諸費用などは、共有者全員で持分割合に応じた費用を負担する必要があります。
権利関係が複雑になると、これらの費用を誰が負担するかで揉めるケースが多いです。
共有不動産の共有を解消する3つの方法
それぞれご案内します。
【方法①】共有不動産を分割する
共有不動産の分割には、次の3つの方法があります。
- 現物分割(土地の場合)
- 代償分割
- 換価分割
- 土地を持分の割合で物理的に分けてそれぞれ単独所有とする方法です。
- 共有者の1人が他の共有者の持分を買い取って単独所有とする方法です。
- 共有不動産を売却し、その売却代金を持分に応じてそれぞれに分配する方法です。
いずれの方法も分割するには共有者全員の合意が必要です。
合意が得られない場合、共有物分割請求調停や共有物分割請求訴訟を行うことで、共有状態を解消できます。
【方法②】共有持分を放棄する
共有持分の放棄は、各共有者が単独で自由に行うことができます。
ただし、共有持分を放棄する際は、他の共有者に対して放棄の意思を表明し、持分移転登記をする必要があります。
また、放棄された持分は他の共有者に帰属するため、贈与とみなされて他の共有者に贈与税が課税されます。
そのため、他の共有者の理解と協力が必要です。
【方法③】共有持分のみを第三者に売却する
共有不動産全体を売却するには共有者全員の同意が必要です。
共有持分のみであれば、各共有者が単独で自由に売却できます。
共有者間で共有持分を買い取ってもらうのが最も手間がかからない方法です。
ですが、共有者間の話し合いがスムーズに進まないことがあります。
そういった場合は、自分の共有持分のみを第三者に売却する方法があります。
共有持分の売却は権利関係が複雑であるため、一般的な不動産会社では買取りを断られてしまうケースが多いです。
共有持分の取扱いを得意とする業者へ相談するのがおすすめです。
売却後も済み続けたい場合等も検討可能ですので、是非ご相談ください。
共有持分についてよくある質問
共有持分に関してよくある質問とその回答を2つご案内します。
マンション購入時の共有持分はどうやって決めればいい?
マンションを購入したときの共有持分は、戸建ての住宅など他の不動産と同様、負担した額の割合によって決めます。
ただし、住宅ローンを利用して購入した場合は、ローンの種類によって持分割合の決め方が異なります。
- ローンの種類別の持分割合の決め方(夫婦2人で購入する場合)
ローンの種類 | 説明 | 持分割合の決め方 |
---|---|---|
ペアローン | 夫婦それぞれが独立した2つのローンを組む | 負担割合に応じて持分割合を決める |
連帯債務型ローン | 夫婦の一方が主債務者、もう一方が連帯債務者になってローンを組む | 夫婦の収入割合に応じて持分割合を決める |
連帯保証型ローン | 夫婦の一方が債務者、もう一方が連帯保証人になってローンを組む | 基本的に債務者の単独名義となる(持分割合は決めなくてよい) |
共有持分に抵当権を設定できる?
各共有者は、他の共有者の同意がなくても、自分の共有持分のみに抵当権を設定できます。
共有持分のみに抵当権が設定されていても、不動産全体に影響しません。
ですが、抵当権が実行され、共有持分が競売にかけられると、他の共有者は第三者と不動産を共有することになり、不動産の管理や運用が難しくなります。
そのため、自身の共有持分に抵当権を設定する際は、できるなら事前に相談してください。
まとめ:共有持分を理解して最適な選択を
共有持分の仕組みやメリット・デメリット、解消方法についての理解が進むと、共有不動産に関する判断がより明確になります。
もし具体的な対応やトラブル防止の方法についてお困りであれば、ぜひ丸の内AMSにお問い合わせください。